宗教法人アカウンタント通信No.179〇引き取り手のないご遺体に関する問題〇引き取り手のないご遺体に関する問題 本年3月に厚生労働省から発表された「遺骨・遺体の取り扱いに関する調査研究事業の報告書」によれば、令和5年度の引き取り手のないご遺体の数は、推定約42,000人となりました。その数は同年度の全死亡者数の2.7%に相当します。人は亡くなると、そのご家族やご親族が遅滞なく葬儀社や菩提寺にその旨を通知し、ご遺体を引き取り、しっかりとご葬儀ご供養をする。そんな常識が少しずつ崩れてきている。そんなことが言えると思います。 引き取り手のないご遺体が発見されると、自治体はご遺体の引き取りの引き取りを親族に依頼して、親族が引き取りを拒んだ場合は自治体による火葬を行います。 ただ専門誌によれば、金融機関に「故人の財産は相続人以外には出金できない」と言われる事例もあり、自治体にとっては事務負荷のみならず金銭的な負荷も深刻な状態となってきました。 もともと国は令和3年に「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取り扱いの手引」を発行していましたが、本年7月にそれが改訂されました。 そこで 「市町村は遺留金を葬祭費用に充当することができるとする規定により、当然に相続人及び支社の債権者等に優先して、遺留金を葬祭費用に充当することができます」 「市町村は、葬祭費用への充当を目的とした預貯金の引き出しも(それ以外の遺留金と同様に)当然に相続人及び死者の債権者等に優先して行うことができます。引き出しにあたって、相続人及び死者の債権者等への意思確認は不要です」 という通達がなされました。 いよいよ、「遺族への配慮」に「行政の事情」が優先する時代になった。そうしなければ自治体のオペレーションが回らない、それほど「死の個人化」が進んでいるということです。 死の個人化とは、「人の死が個人で完結し、遺族、親族が関与しない、あるいは関与がきわめて薄い状況」です。 筆者が住職を務める寺院でも、お檀家さんから「独身だった叔母が亡くなったと自治体から連絡が入った。甥であるあなたが葬儀、納骨、遺品整理等を行ってくださいと言われた」という連絡を受けたことがありました。 その方は「生前叔母には世話になったので」と葬儀その他の仏事、事務一切を行う意思を表明されましたので、こちらもその方のご希望通りのご葬儀、納骨を行いました。後日弁護士の先生に一部始終をお話ししたところ「法的には必ずしもその方が全てを請ける義務はなかったが、その方のお気持ちこそが最も尊いものであると思います」というお答えをいただきました。 逆に、いわゆるおひとりさまから、亡くなった後の葬儀、納骨等についてご相談をうけることもあります。「兄弟には知らせないで永代供養墓に納めて欲しい」といったご希望もあります。いずれにせよ、相談者さんのお気持ちに寄り添い、必要に応じて自治体とも連絡し、士業の先生と連携するなどして、安らかなるお心で極楽浄土に旅立っていかれるよう、努めたいと思っています。「死の個人化」に抗うことは難しくても、宗教者としてできることはあるのではないか、そう考えます。(宗教法人アカウンタント養成講座 講師 高橋 泰源)
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